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囀る鳥は羽ばたかない映画版の感想と考察もどき(注意書きあり)

今回のブログは囀る鳥は羽ばたかない映画版の感想と考察もどきの内容です。
原作は商業BLですが、映画版はR18となっております。
フォロワーさんに未成年者がいるのと苦手な方がいるので文章・表現に詳細は避けますが、作品の都合上キャラクターの説明で過激な部分がどうしても出てしまいますので(性、暴力行為など)読んで無理そうなら素直に閉じて下さい。
では始めます。

 

それはある夜の出来事であった。
「フォロワー誰かー」という心の叫びにいいねしたのが始まりである。
映画を観に行きたいが、一緒に行く相手が捕まらなかったらしい。
そこで内容は全く知らないが、久々に会いに行くかーというノリで了承した。
問題はそこからであった。リンク先を案内されて確認したら、R18という文字。
まあ長い人生いろいろあるからと了承した。「初めて年齢制限観るので固まっても気にしないで下さいね」
そうリプライすると彼女はこう返してきた。
「いや私も誘ってから『……18禁だな』てなりました」

私の中で2020年おもしろTwitterにノミネートされた瞬間であった。

 

冗談はさておき、最初にフォロワーさんが何で原作は年齢制限がかかってないのに今回の映画はR18なのかという疑問を持っていました。映画を見終えた私の一個人としての意見ですが、以下の内容がかなり濃く描写されていたからだと思います。

1 性描写が濃厚かつ暴力行為が過剰。なおかつ未成年者に対する性暴力、それも親からの行為を強いられている。

2 ヤクザ世界が中心となっている。

3 タバコの描写がかなり多い。

 

まず、R18を回避するには1の場合は相当削るか描写を抑えれば、R15までにすることは可能だと思います。
2の場合もヤクザ関連は最近は厳しくなっていますが、これもR15で通るはずです。

おそらく問題は3のタバコの描写です。
私は販売経験がありますが、タバコは10年以上前と比べてかなり厳しくなってきました。未成年者に販売したことで前科が付き、全店販売禁止の可能性も出てきています。
今ゲームやアニメでも、タバコを堂々と吸っているキャラクターはだいぶ減ったと思います。
ゲーム神宮寺三郎の事件簿シリーズのスタッフも、タバコの規制が厳しくなり作成が難しくなってきたと語っています(主人公はタバコを吸うことで、推理をまとめる重要なコマンドがある)
映画を見て感じたのですが、主人公の心理描写は性行為にあるのではなくタバコに隠されている印象を受けました。後ほど語りますが。

もし自分がスタッフとしてこの作品を描写するなら、外せない要素がこれだけあるなら手加減もせず描写を削らず年齢制限を覚悟してでも作り切る。そう思わせる力があった。

本当はもっとややこしい理由があったのかもしれませんが(公式に書いてあったりして笑)

以上が簡単ななぜ年齢制限なのかという考察もどきです。

 

ここから先が映画の感想になります。
描写は抑えてありますが、気分悪くなったらいつでもご退場を。

 

ドリンク片手の私、開始数分で固まる。
ちょっと待って、君は友達を嵌めたのか。しかも性行為を隠し撮りという主人公矢代。しかも友達のお医者さん好きらしい。
性行為、性暴力の勢いにドリンク飲んで耐える。すごいな感想どこから取ってこようかと悩んだところで百目鬼が登場する。
ここで二人の関係がうまいなと思い始める。

映画を見続けるとわかってくるんですけど、矢代は子供時代に性暴力を受け続けた結果、性行為がなければ(多少乱暴でも)生きられない依存性を抱え込んでしまい。
対して百目鬼は妹が父親に性暴力を受けているところを見てしまい、男性機能が不全になってしまうんですね。お互い似た環境で身体の反応が全く違う。

そんな過去があるにもかかわらず、二人の性格は大きく歪んではないんですよ。矢代は自分の人生を人のせいにせず、百目鬼が言うこと聞かないと愚痴りながらもドリンク買ってくるし、百目鬼の妹に対して自分の過去をさらけ出したり、他者にどう思われようが自分のことは好きと言えるキャラクターなんですね。これは衝撃でした。もっとひねくれてもいいのよ? 親分や友人影山の影響があったのだろうか。

百目鬼の人となりは、物静かな無骨さがあるなあと。妹が悲惨な状態と知った時に父を殴り、殺してやれば良かったと口で言いつつも、妹のことをおそらく語らず刑務所へ入っています。出所後も気にかけ自分に近づけさせないようにしたり、メールのやりとりをしたりします。それでも矢代より心情が読めないと思いながら観ていました。なぜなら、彼にはタバコのようなわかりやすいアイテムがないからなんですね。それとある行為をただただ受け入れていること。しかし深く絡んでくるのは矢代ぐらいなので、その分後半から終盤にかけての変化がわかりやすく心に残るでしょう。なぜ誰もあの人をわかってくれないのか。綺麗なあの人を。その百目鬼の心もまだ誰もわかってはくれないけれど。

タバコの話を出したので、ここで語る。
初っ端から矢代はタバコを吸う。たばこ嫌いな人が悲鳴上げそうなぐらいスパスパと。
相手に煙を吹きかけるシーンもありますが、そのままの意味で取ると話の筋、つまり矢代という人物を見逃してしまいます。
まず最初に考えたのは、相手との距離・壁を意味しているのではないかと。
彼は終始タバコを吸っていますが、百目鬼とその妹に対してはタバコの描写がガクンと減るんですね。しかしタバコの意味はこれだけではないと思ってます。
次は、相手を煙に巻く。つまり相手に対して優位性があることを表していると思います。
矢代の行動を性行為中心に見ると、明らかに体を相手に好き勝手されているはずなのに、他者から見られたときに狼狽えるのは激しく突き上げてきた方で矢代は挑発。相手は捨て台詞残して逃げていく。衝撃的でした。こんな受けがいるとは、時代が変わったなあ。私が若い頃は受けはここまで攻撃力高くなかった(遠い目)
そして最後の意味ですが、見た当初は気が付かなかったです。
矢代と百目鬼は何回かある行為をしています(ここでは大人の行為の一つなので伏せます)ある時にその行為が済んだ後、矢代は百目鬼の膝枕に近い状態で寝るんですよ。そこを思い出したときに、あっとなりました。これは赤ちゃん返りだ。口さみしいんだ。つまりタバコの描写があるのは、彼にとっての指しゃぶり。確かな愛情を得ることができなかったから。百目鬼がいるときにタバコの描写が少ないのは、壁を作る必要も優位性を誇示する理由もなく、愛情の代わりを彼との行為で埋めているということ。なんてこった。悲しすぎる。

物語の後半、医者の友達影山と自分が嵌めた男は恋人関係が続いていること、影山は矢代が昔から変わってないと思っていることを知ってしまうんですね。ずっと友達ということですか……裏切りはない。しかし一番欲しい人は手に入らない。だからこそ響くラスト。

衝撃の展開と矢代の言葉が響く。
「人を好きになる孤独を知った」

原作を全く知らない上にR18映画初めてだったのでかなりうろ覚えですが、このような印象をうけました。あと何で今回ぼかした文章で感想を上げたかと言うと、原作が制限なく販売しているのに映画が違うのは何故かをファンの方そうでない方にこういう理由かなと語りたかった。
それと、未成年者もいつかは年齢制限ものに興味を持つことはあるだろうし、その時に性行為や残酷な描写に目を奪われがちだけど、別の所を見逃さないでほしいなと。過激なものを観る機会は増えるだろうけど、しっかり見過ごすなよと。そんなところで終わりー。